契約書の重要性
法律上は、契約は口頭でも有効とされるのが原則であり、書面によることが要求されている契約類型は、さほど多くはありません。その意味では、契約には書面が必須であるというわけではありません。
しかし現実には、契約書は極めて重要です。なぜなら、文書の形に定めておかなければ確認ができず、実際にどんな合意の内容だったかどうかが確定できないことが多いからです。また、契約当時は当事者の認識が一致していたとしても、口頭での契約では証拠がないことも多く、事後的に証明できなくなってしまうことも少なくありません。
契約書がなかったら?
契約書がない場合、裁判になったらどうなるでしょうか?
契約の内容を、契約書以外の手段によって証明する必要が出てきます。
現代では、メールやSNSでのやりとりなど、正式な契約書がなくとも、やりとりが記録される場合も少なくありません。これらにより、契約の存在や立証が可能なケースも決して少なくないでしょう。
しかし、契約は多くの場合、下交渉を繰り返して内容が決定され、それから契約成立に至ります。当然、上記のようなやりとりは、その下交渉でしかない場合も少なくありません。つまり、これらの証拠だけでは、下交渉の形跡は見えるが、契約締結までは至っていなかったという判断もあり得るわけです。
したがって、合意を確実に残しておくためには、契約書を確実に作成しておくことが必要なのです。
継続的な関係こそ、契約書が必要
あなたの会社の取引先の中には、長期にわたって契約書がないまま取引を続けている相手もいるのではないでしょうか。今後も、お互いの信頼関係でなんとかなると思っていませんか?
確かに、単発的な取引よりは、1回あたりのトラブルの確率は低いでしょう。しかし、低い確率でも、取引が何百回何千回と続いていけば、一種のロシアンルーレットを引き続けるようなもの。トラブルの発生を全て避けて通れるわけではありません。それまでの信頼関係で乗り切ることができればいいですが、お互いの折り合いがつかなければ関係が破綻してしまうこともありうるのです。
そんな不幸を避けるために、継続取引の準則となる基本契約を締結しておき、トラブルになった時でも、お互いが納得のできる解決をあらかじめ考えておくべきなのです。
とはいえ、既に継続している取引に関して、何のきっかけもなく基本契約を締結しようと提案することは、それ自体が相手との関係を損ねることにもなりかねません。
だからこそ、契約の最初に、基本契約を締結しておくべきです。
また、既に継続している契約の場合、小さなトラブルがあった時がそのチャンスです。トラブルの解決、今後の円満な関係継続という共通目的があるはずですから、それをきっかけに、トラブル解決の道筋をすりあわせ、基本契約の締結をすることで、今後のトラブルを減らすとともに、関係強化を図ることができます。
契約書の内容の吟味の必要性
契約書のポイントは、できるだけ内容を1つの意味にしか解釈できないようにすること、自分に不利な内容にならないようにすること、問題となる場面をしっかりイメージして内容を決定しておくことです。
例えば、掃除機の売買契約書で「欠陥があった場合には、返品することが出来る。」という契約条項だけがあったとしましょう。
この場合、「欠陥」というのは何なのかがかならずしもはっきりしません。動かないような致命的な不具合が欠陥に当たるということには争いがないかもしれませんが、吸引力が他社製品と比べて劣っていればそれも欠陥なのか、その場合はどの程度劣っている必要があるのか、あるいは本来的な性能とは関係のない本体表面の些細な傷も欠陥なのか、などはこの言葉からはよく分かりません。当然、売主と買主で意見が違うことは少なくないでしょう。
また、判断権者の問題もあります。極端な例ですが、「買主が欠陥と認める不具合があった場合には返品することが出来る」などという条項になっていたら、売主は、買主の気分次第で、常に返品のリスクを抱えることになります。
また、この事案の場合、定義以外にも問題はあります。返品以外の条件がどうなるのかということです。
仮に返品できるとして、その場合の代金はどうなるのでしょうか?郵送料等の必要経費は?契約書に書いていなければ、お互いの意見が食い違う可能性はあり、その場合は最終的には裁判所が判断することになります。
契約書は、トラブルになった時に意味のあるものです。トラブルを想定し、事前に条項を検討しておく必要があります。
法律家でない人が作成した契約書は危険
皆さんの中には、同業他社が利用している、あるいはインターネット等で公開されている契約書のひな形を使って契約をされている方も多いと思います。
確かに、同じような取引で使われている契約書のひな形を使うと、手軽に契約書を作成でき便利です。ひな形さえあれば、弁護士の関与は必要ないと思われるかもしれません。
しかし、私が事件の依頼を通して感じるのは、意外と素人が適当に作った契約書が一人歩きしてひな形化しているケースが少なくないということです。
その典型は、その分野に関する法律が無視されているケースで、最悪の場合、無効な契約書になってしまいます。特に、古い契約書のひな形を使ったために、最近の法律が無視されているというケースなどは散見されます。
しかし、問題はそれだけではありません。
法律には、独特の専門用語があります。
専門用語を使用する場合、その意味を正しく理解して使用しなければ、想定した意味とは全く異なる内容の契約と解釈される可能性があります。
法的には一般的ではない、あるいは多義的な用語を使用する場合、その用語の意味を定義しなければ、後からどういう意味なのかがはっきりせず、紛争の原因になりかねません。
契約内容が法律違反で無効、というのはイメージしやすいかと思いますが、それだけではありません。結構多いのが、用語の定義が曖昧で解釈上の疑義が生じるケースです。
少し話が脱線しますが、スポーツに例えてみたいと思います。
野球のルールブックに、3球ストライクで三振だけと書いてあり「ストライクとは何か」が書いてなかったらどうしますか?
当然、その球がストライクかどうかという点が問題になりますよね?「ストライクとは①空振りする②バットに当てたがフェアグラウンドに飛ばなかった③ボールがホームベースの左右とバッターの膝と肘の高さで作った長方形のゾーンを通過した場合のいずれかである」というストライクという用語の定義を置かなければならないわけです。
当然のことですよね。
ところが、世の中の契約書のひな形には、この点がおろそかになっているものが決して少なくないのです。
我々弁護士が契約書をチェックする場合、このような定義がしっかり契約書中にあるか、あるいは、法律に定義がある用語について、そのようの語の使い方で問題がないかなどをチェックします。
また、前述の返品の場合の代金や郵送料など、規定されていない内容がないかどうかなども細かくチェックします。
これらの区別は、法律の専門家である弁護士でなければ困難です。
消費者契約法・民法の約款規定には注意
BtoC(業者対消費者)の取引の場合、常に気をつけるべき法律として、消費者契約法があります。
消費者相手の契約では、企業に一方的に有利な条項は厳しく規制されているのです。
また、改正民法では、約款に関する規定が法制化されました。
契約書に書いていれば何でも有効と思われている方が意外と多いのですが、あまりに不当な条項は無効になる可能性があります。特に消費者に対する契約では、この点について慎重に配慮する必要があります。
顧問契約における基本契約書チェック
既に、主要な企業との間で基本契約書を交わしている場合も多いでしょう。その基本契約書を交わした時、十分なチェックをしたでしょうか?
顧問契約を交わして頂いた場合、これまでに存在する基本契約書や普段使っているひな型については、ご希望に応じてリーガルチェックをさせて頂いています(締結後1年以上の顧問契約継続が条件です。チェックは契約締結の段階で着手します)。
契約書のチェックというのは、皆さんが想像するよりもかなり骨の折れる作業です。特に継続的契約の場合、会社のバックボーンが分からなければ、想定外の見落としをしてしまう可能性もあります。
単発契約では、相応の費用をいただくことになりますし、特殊な契約書の場合には断らざるを得ないケースもあり得ます。
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