労働問題を無視できない時代になったこと

会社の規模が急拡大したベンチャー企業、あるいは逆に、長年経営を続けてきた老舗企業の方の中には、労働法を守っていたら経営は成り立たないと思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現代は、このような考え方が通用しない時代になってきています。
今や、一定の規模で経営を続けていくのであれば、労働法遵守は避けて通れない道になったのです。

かつての労働問題

労働法はそもそも、労働者をえこひいきすることを前提にした法律です。その根底には、雇用者と被用者とでは元々の実力格差があることから、労働者をえこひいきして初めて平等、公平と言えるのだという考え方、価値観があります。
このため、経営者の感覚としては、労働法の規制が不公平に感じるのはごく自然なことですし、なぜそこまでしないといけないのか、という方も少なくないでしょう。
実際、かつては、大企業でさえ労働法はあまり守っておらず、会社を辞めることになった人が、最後に一矢報いるような形で、残業代の請求を行ったり、解雇無効を争い大赦と引き換えに解決金を受け取るというのが実情でした。いわば、ドロップアウトする人たちが最後の補償として一定の金銭の支払を求めるケースが散見される程度の機能だったわけです。
このような状況では、最初から労働法を守るよりも、トラブルが起こってから対応した方がコストが低いと考えている方もいたでしょうし、法律的・倫理的には問題があるものの、経済的観点からは間違っていなかったのかもしれません。

インターネット社会における情報の拡散

かつては、残業代や解雇無効に関する知識を持って退職する人は今ほど多くはありませんでした。しかし、現代では、インターネットにより、この辺りの情報は簡単に入手することができます。
この結果、弁護士のところに相談に来られる方も、労働基準監督署に相談される方も、昔よりも圧倒的に増えたと思います。

国民の意識の変化

これも、インターネットの影響が大きいと思いますが、現代社会では価値観の変化も生じてきています。
セクハラ・パワハラ・ブラック企業といった企業内での問題がクローズアップされて社会問題となっています。世の中の価値観が、単純に業績だけを追いかけるだけでは企業として不十分で、個々の労働者を保護することが重要であるという方向にシフトしていることは否定できません。

人手不足

コロナ禍における不景気よりも以前は、どこの会社も人手不足にあえいでいました。コロナが収束すれば、同様の問題が生じることは必定です。なぜなら、単純に高齢化社会で若者の人口が少なくなっていくのですから、求人数が一定でも、労働者にとっての売り手市場が加速するのは避けられないからです。
労働者が企業を選ぶ時代になりつつある以上、国民の意識の変化を受け入れなければ、求人もおぼつかないということになりかねません。

外国人雇用と労働法

日本人の求人難を受けて、外国人労働者を雇用する動きがここ数年活発化していることはご承知のとおりです。政府も、かつての専門技能を前提とした就労資格に加え、特定技能の制度を創設したり、技能実習制度を改正したりして、現業的業務も含め、外国人雇用を推進する方向にあります。気をつけておかなければならないのは、推進による拡大の一方で、かつて社会問題となった外国人の搾取的処遇を繰り返さないために、規制をきわめて厳しいものにしていることです。

技能実習生、あるいは特定技能制度に基づく就労においては、労働法違反は、受入れの欠格事由に該当します。しかも、外国人に対する処遇だけではなく、労働者全体に対してです。例えば日本人が勤務中の事故で死亡し、その原因に労働安全衛生法違反があった場合も、この欠格事由に該当します。つまり、これが原因で、突然実習生や特定技能外国人の受け入れが一切できなくなるという事態にもなりかねないのです。
外国人雇用と労働法の遵守について、詳しくはこちら

労働法を遵守しなければ企業経営が成り立たない時代になりつつあること

そもそも、労働法を遵守しなければ、求人そのものに支障をきたす時代になりつつあると言っても過言ではないでしょう。
かつてよりも労働問題が法的紛争になる割合は増加していますし、会社の規模や業態によっては、インターネットで拡散することによるレピュテーションリスク(社会的評価の低下のリスク)も無視できません。
さらに外国人を雇用していた場合に至っては、一気に外国人労働者を失うリスクさえあるのです。

労働者保護の強化に対応する必要性

労働法においては、最高裁判例が労働者保護を強化してきた歴史があります。そして、労働契約法が制定され、これらの判例法理が法律になってきました。
さらに近年、法律、判例の両面から労働者保護はさらに強化され続けています。
例えば法律では、有期雇用から無期契約への転換の制度ができたり、有給休暇の義務化や同一労働同一賃金の実現をはじめとする働き方改革関連法などが挙げられます。
また、判例の面においても、同一労働同一賃金の原則が判例によって具体化されてきていますし、山梨信用金庫事件により、不利益変更禁止の原則における同意は、非常に厳しい条件が想定されるものになりました。

前述のとおり、労働法を遵守せざるを得ない世の中になってきています。これらの法律についても十分フォローアップしていく必要がありますが、これを、企業が自力で行うのは大変だと思います。法律家のサポートが必要です。

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