セクシャルハラスメント・パワーハラスメントとは

セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、職場内での労働者の意に反する性的言動をいいます。

大きく、対価型セクハラ(被害者が拒否や抵抗をしたことに対し解雇や降格など不利益を与えること)と環境型セクハラ(セクハラにより被害者の就業環境が不快なものになり、能力発揮に重大な悪影響が生じる)とに分類されています。

パワーハラスメントとは、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える。または職場環境を悪化させる行為をいいます。

6類型に分類されていますが(身体的攻撃、精神的攻撃、人間関係からの切り離し、過大要求、過小要求、個の侵害)、あくまで典型的な場合を類型化しただけで、これらに当てはまらなくてもパワハラに該当する可能性はあるとされています。

セクハラ、パワハラに共通する特徴は、国の見解では、きわめて広くとらえられているということです。

例えばセクハラでは、新婚の夫婦に子どもが生まれるかどうかを聞いたり、独身の人に恋人がいるかを聞くことも該当しうるとされています。

パワハラについては、他の従業員の前での厳しい叱責は従業員に非があってもパワハラに該当しうるとされています。また、業務上の要求は、過大(厳しいノルマなど)でも過少(いわゆる窓際族)でもパワハラになり得るので、従業員の能力に応じた適切な要求になるよう検討する必要があります。

誤解を恐れずにいうなら、結局は、従業員が不満を持てば、性的なことであればセクハラ、上下関係に関することであればパワハラに該当する可能性が否定できないのです。

なぜこのように広い定義になっているのでしょうか。実はこれは、厚労省の基準が、職場の環境の改善を目的に作られたものであるということに起因します。すなわち、問題のある行為はできる限り拾い上げ、防止の措置を会社に求めようとした結果、定義の段階で門前払いにならないよう広くとらえられているのです。

パワハラの場合には、適切な指導との境目が微妙

パワハラの場合、被害者にも非があるケースはあります。例えば、ある従業員が担当する業務で、本人の能力や配慮の不足で失敗するなどのケースでは、上司としては指導したくなるのは当然でしょう。

この場合に、もちろん指導が一切否定されるわけではありません。業務の適正な範囲を超えた場合に、初めてパワハラになります。

ただ、この境目はかなり微妙で、「加害者」と「被害者」で受け取り方が全く異なることもしばしばです。暴力を振るったようなケースでは加害者側に言い訳のしようがありませんが、口頭での叱責の場合、業務の適性の範囲内といえるかどうかが裁判でも大きな争いになりがちです。

これに対し、性的な言動が業務上必要な場面は通常想定しがたいので、セクハラには業務の適正な範囲は問題になりません。現代でも職場結婚は相当数ありますし、性的なやりとりが職場で一切禁止されるというわけではありませんが、相手が嫌がった場合には、セクハラとして取り扱われることになり得るということは、心に留めておかなければいけません。

セクハラ・パワハラ=即損害賠償?

会社には、セクハラ、パワハラを防止する義務があります。したがって、セクハラ、パワハラを放置すれば、加害者だけでなく会社も損害賠償義務を負うことがあります。

ただ、セクハラ、パワハラに該当する行為が、全てが多額の損害賠償請求の対象になるわけではありません。

前述したとおり、セクハラ・パワハラの定義は広範で、しかも人によって感じ方が違います。

したがって、会社が全てのセクハラ、パワハラを未然に防止するのは不可能です。

会社が責任を負うのは、一定程度を超えたセクハラ・パワハラに限られると考えられますし、日本の損害賠償制度では、気分を害しただけではあまり大きな慰謝料は認められないのが普通ですから、数万円~10万円程度の損害賠償に留まるケースも多いでしょう。

ただ、そのような事態は、できる限り避けるべきですし、結果がどうあれ、裁判により請求されることになれば、会社の負担は無視できないものになります。

早急な対処が必要

裁判まで行かなくとも、セクハラ・パワハラの問題が、従業員のモチベーション低下を招くことは明白です。当事者だけでなく、周りにいる従業員の雰囲気も悪化するでしょう。
だからこそ、厚労省も広く定義をとらえて、セクハラ・パワハラの撲滅を標榜しているのです。

企業経営の根幹は、健全な職場環境の確保です。セクハラ・パワハラの疑いがある場合には、早期に適切な対応を行うことが必要です。

一方的な決めつけは厳禁

セクハラ・パワハラの問題を受ける場合によく見かけるのが、加害者または被害者の一方を大した調査もせずに悪者として扱っているケースです。

事案の中には、お互いの言い分はすれ違っているにすぎず、会社が早い段階で適切に介入し、お互いの言い分を調整することでうまく収まるケースもあります。
当事者同士はうまくいかない場合でも、一方が悪いと決めつけることは難しいケースも少なくありません。

これらのケースにおいて、一方的な決めつけで安易に片方の肩を持つことは、本人達の不満を募らせるだけでなく、周りの従業員にも悪影響を与えかねません。

問題が発生した場合には、十分な調査を行った上で、両当事者にとって最もよい解決が何かを探る必要があります。

弁護士への早期の相談を

セクハラ・パワハラの対処には、公平な取扱ときめ細かい対応が必要不可欠です。どうしても、会社側は、冷静な目で見ることが難しい場合も多いでしょう。

そのため、他の問題と比べても、弁護士が早期に相談を受け、事案の解決に乗り出すことが有用な類型と言えます。

ご相談はこちら

当法律事務所は依頼者の正当な利益を守るために、攻めの姿勢で、できる限りの手段を尽くし弁護いたします。
豊富な実績と攻めの大村法律事務所にお気軽にご相談ください。
お問い合わせ

企業にとっての労働問題関連ページ一覧

労働問題関連TOP
 現代社会と労働問題
 就業規則
 残業代請求
 解雇
 労災
 セクハラ・パワハラ
 労働審判・仮処分
 団体交渉への対応(合同労組を含む)
 外国人雇用と労働問題