技能実習生とは

技能実習は、在留資格の1つで、外国人に対し、技能等の適正な習得、習熟または熟達を行わせるための国際貢献として制度が確立されており、「技能実習は労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」とも規定されています(技能実習法3条)。

現在、永住者に次いで二番目に多い在留資格となっている上、国の方針では、さらに拡大していくことが予定されています。

技能実習の種類

技能実習は、企業単独型と団体監理型に別れます。文字通り、前者は単独の企業が外国にある同一法人や密接な関係のある職印を受入れるもので、後者は、監理団体が複数の企業に雇用関係のあっせんをするとともに、それらの企業の管理を行う形で運営するものです。

企業単独型、団体管理型にそれぞれ、第1号、第2号、第3号の3種類の区分があります。これらは、熟練度に応じてステップアップするもので、第2号には第2号を、第3号は第3号を修了していること(技能検定に合格)がそれぞれ必要です。

対象職種

1号には、職種制限がありませんが、1年のみの期間ですので、現実には、2号技能実習に移行可能な職種が中心になります。2号技能実習が可能な職種は、農業関係、漁業関係、建設関係、食品製造、繊維・衣服、機械・金属関係、その他等の分野で、個別に指定されています。2021年3月16日現在、85職種156作業が、3号実習が可能な職種は、77職種135作業が指定されています。

法の建前と実態の乖離

技能実習生は、日本の労働力の供給不足を補う形で機能していることも否定できない事実ですし、当の外国人もまた、収入の確保を大きな目的としている人が大半です。しかし、前述の通り、技能実習は、あくまでも技能等の指導という国際貢献のための制度であり、労働力確保のためではないという建前となっています。

また、技能実習法施工前技能実習生は、安価な労働力として搾取される方が多く、社会問題となり国際的非難の対象となりました。

この結果、技能実習法は、技能実習生保護のために数々の規制を創設しました。監理団体について許可制となり、技能実習計画は認可が必要となった上、不正行為についてはこれらの取消や改善命令、事業停止命令、刑事罰などが整備されました。それまでの制度が、在留資格を通じての間接的な規制しかおいていなかったのは対照的です。

現在の法律に従うと、日本人を雇用するのよりもコストがかかることは避けられません。企業の方々が、安い労働力として安易に雇用することは非常に難しい制度となったのです。

同一賃金原則

技能実習においては、各企業は、日本人と同一レベルの報酬を支給しなければならないとされています。外国人である以上、日本語レベルが不十分なのは当然です。したがって、現実問題として同レベルの接客や意思疎通が出来ない場合も多いでしょう。
しかし、日本人と同レベルの報酬が必要とされている以上、それを理由として賃金を減額することは許されません。

この結果、管理団体や送り出し機関などのコストがかかる分、日本人よりも低コストで働かせるというのは難しい制度になったと言うことです。

ただ、一方で、技能実習は、在留資格の期間中、同一の企業に所属することが予定されています(第3号は一応転職・転籍が可能です)。途中で退職するということは原則としてないわけです。したがって、採用したもののすぐに退職する、というリスクは小さいといえるでしょう。

監理団体

技能実習生を受入れる企業に実習生をあっせんすると共に、実習に関する監理を行う組織を「監理団体」と言います。国の許可制で、営利団体であってはならず、多くの場合は、事業協同組合などが行っているようです。

帳簿書類の作成、据置きはもちろん、委託できる範囲も厳しく制限されており(=他団体への丸投げは許されない)、違反した場合には刑事罰が設定されています。外部役員または外部監査人をおくことも義務付けられています。

現地語での相談を随時受けられる状態を整える必要もあります。

さらには、利益を出してはならないという、一般企業にはあり得ない定めがおかれ、各年度の収支は全て実費に費消しなければなりません。したがって、内部留保を持つことも許されません(あくまでも事業内の話で、他の事業等で利益を出すことは差し支えありません)。

実習実施者

実習実施者とは、要するに技能実習生を受入れる企業です。

技能実習は、あくまでも技能の習得、習熟を目的としていますから、実習は計画的に行わなければいけません。このため、実習実施者は、技能実習生ごと、かつ、技能実習の段階ごとに、あらかじめ技能実習計画を作成し、国の認定を受ける必要があります。技能実習の内容や体制について、細かい認定基準があります。

変更があった場合には、その都度申請を受ける必要があります。

このような制度ですから、当然、1つの企業で実習を行うのが前提であり(親子会社などの一定の密接な関係がある企業同士が共同で行うことはあり得ます)、在留資格の期間(第1号は1年、第2号は2年)、同一企業で働くわけです。第3号については転職、転籍も可能な制度となっていますが、実習生の都合だけで一方的に変更することは出来ないので、多くの場合は同一企業で働くことになると思われます。

実習実施者は、労働、社会保険、税務の法律を遵守する必要があります。これは、良好な職場環境の企業でなければ実習生を所属させてはいけないとの発想に基づくものであるため、技能実習生に関してだけでなく、企業全体での遵守が求められます。

労働法は全般が含まれますので、残業代の不払いなども含まれます。技能実習生の多くは、実習中の収入を期待してきていますので、残業も積極的に行う人が少なくありません。そういった実習生に残業代を支払わなければ、外部に通報される可能性は高いでしょう。
また、深刻の労災発生の場合に労働安全衛生法違反で摘発されることは少なくありません。実習生とは関係ないところでの労働安全衛生法違反であっても、認定の取消や新たな受入れに際しての欠格事由になりうるのです。

そういう意味では、技能実習生の受け入れは、優良企業であることが必要であるともいえます。

弁護士関与の必要性

技能実習の制度は、技能実習法の制定により、直接規制により厳しい規制が導入されました。利益を出してはいけないなどの制度は監理団体に対して厳しすぎる部分もありますが、いずれにしても、今後、隠れて不正を行おうとする組織や、手続などをいい加減にしかできていない組織は淘汰されていく時代に入ったと思われます。

法制度も、要求される事務手続も複雑で、法規制に則った運営をすることは決して簡単ではありません。

顧問、外部役員、外部監査人等、色々な関与の仕方がありうると思いますが、弁護士の関与は必須になってくると思われます。

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