裁判か任意交渉かの選択が最も重要で悩ましい

債権回収のための具体的方法のページで説明した通り、債権回収の具体的方法は様々な方法があります。ただ、主に用いられるのは、任意交渉か訴訟かであり、このいずれを選択するかが最も重要ですし、悩ましいところでもあります。
※ 債権の履行には商品の引渡などもありますが、以下では、金銭債権の回収(代金支払)を念頭に置きます。

任意交渉と訴訟の違い

任意交渉と訴訟の大きな違いは、強制力の有無とかかる時間の違いです。
言うまでもないことですが、相手の意に反して支払を強制できるのは、裁判だけです。任意交渉では、相手の合意がない限り何も出来ません。どんなに理不尽な言い分でも、相手が支払わないといえば、任意交渉では履行を強制することは出来ないのです。

その反面、訴訟は一般的に言って時間がかかります。裁判の期日は、多くて1ヶ月に1回。ひどい場合には期日間が2ヶ月以上開くこともあります。争いがない事件や相手が欠席する事件であれば、1回で結審してその後まもなく判決ということもありますが、相手が争う場合、早くても半年。1年、2年とかかるケースも決して珍しくありません。
ただ、裁判は通常、ゆっくりでも着実に進行していくという面はあります。任意交渉の場合は、相手が譲らず膠着状態になれば、何の進展もないまま時が過ぎていきます。つまり、任意交渉での限界を見極めて、早めに訴訟に切替える必要がある場合もあり、この見極めを誤るといたずらに時が過ぎていきます。

相手が支払に応じないのは何が原因か。

では、任意交渉と訴訟のいずれかを選択する上で、ポイントになるのはどのような点でしょうか。具体的に見ていきましょう。

相手が支払に応じない理由は、大きく3つに分かれます。1つは言い分の食い違いで、もう1つは手元不如意(お金がない)ケースです。さほど多くはないでしょうが、単純に相手がいい加減なケースです。
当然のことですが、それぞれの場合において、選択のポイントは異なります。

相手と言い分が食い違う場合

相手と言い分が食い違う場合のポイントは、妥協点が見つかる見込があるかどうかです。

言い分が食い違う場合にも、明らかに一方が無茶を言っている場合もあれば、お互いに一理ある場合もあります。当然のことながら、裁判になった場合の勝訴の見込は全く異なります。

また、今後の継続的関係を維持する必要性や紛争の経緯がそのことにどう影響するかなども考慮する必要があります。

自社の経営状態(キャッシュフローなど)への影響も考慮する必要があるでしょう。多少減額することになっても当座の資金が必要な事情があるか、といった観点です。

任意交渉にするか訴訟にするかは、これらの観点を総合的に考えて判断する必要があります。

結局ポイントは、お互いに歩み寄って落とし所を見つけることが出来る事案かどうかということになります。無理であれば、早めに訴訟を選択すべきでしょう。

手元不如意のケース

相手にお金がないケースは悩ましいところです。どんなに言い分が正しくても、お金がなくても支払ってもらえません。
通常、取引先を失うのは相手も怖いはずです。ということは、相手に正当な言い分がないのに支払ってもらえないのは、経営不振に陥っている可能性が高いと考えなければいけません。
本当に経営破綻が間近に迫っているケースでは、裁判をしても、判決が出る前に破産してしまうこともあります。そうすると、いくら強制力がある判決であっても、破産手続の中で他の債権者と平等にしか取り扱ってもらえず、回収のための弁護士費用などが無駄になってしまう可能性もあります。
もちろん、だからといって諦めるわけにはいかないケースも多いとは思いますが、リスクとしては考慮しておかなければいけません。

破産間近とまでは言えないケースでは、全ての債権をそのまま支払うことは難しくても、一部の支払は出来るケースもあるでしょう。相手にとってメインの取引先などであれば、資産状態や受注の状況などを開示させて、資産への担保設定等を踏まえた支払猶予など、相手にとってもメリットのある解決を図っていくことが考えられます。
逆に、影響力がさほど大きくないために後回しにされるような立場であれば、腹をくくって訴訟により改修を目指すべきとの判断もあり得るでしょう。
たまにあるのが、取引先よりも金融機関に対して優先して支払っているようなケースです。金融機関担当者の言いなりになっている場合もあれば、経営者が未熟で優先順位の認識を誤っている場合もあるでしょうが、球場において、金融機関を優先することはあり得ません。事業再生においても、金融機関の支払条件を変更するのが基本で、取引先の債権にまで手を付けなければいけないケースは、ほとんどの場合は破産になります。。こういった対応を取っていることが分った場合には、相手に金融機関との交渉を要求するべきでしょうし、それ訴訟も含めた毅然とした対応により考えをあらためさせる必要があるでしょう。

相手方がいい加減な場合

新規の取引先などの場合には、単純に相手がいい加減で支払管理さえ出来ていないというケースや、元々不誠実でまともに払う気がないといったケースもないわけではありません。
もし、このような取引先と継続的に付き合っているのであれば、頻繁に改善を求めるか、代替の取引先を探して早めに契約を解消するべきですし、過去の取引については毅然とした態度で訴訟を含めた改修を行うべきです。